家庭内暴力(児童虐待)は、家族内で強者によって行われ、複数の世代続くことがあります。子どもは身体的にも精神的にも脆いため、被害者となることが多くあります。叩いたりすることが普通の関わり方となっていたり、言い争いの解決やしつけのために暴力を振るう家族もいます。虐待には、子どもの最小限の世話をしないことを含みます。家庭内暴力(児童虐待)は下記のような形で現れます:
身体的暴力
身体的暴力は、保護者や、その他の家族、また身近にいる人によって、子どもの身体を、意図的に非偶発的に傷つけることです。身体に跡を残す場合も残さない場合もあり、時には死にいたらしめる場合もあります。平手打ち、つねる、蹴る、物を投げるなどの行為が含まれ、怪我、重篤な外傷、やけど、身体部の切断につながることもあります。
身体的暴力と体罰に違いはあるのでしょうか? 体罰が一般的に行われている国もあれば、禁止されている国もあります。体罰は親と子どもの関係を悪化させ、何が良いのか悪いのかの線引きがあやふやになり、暴力を使って問題を解決する習慣を作ってしまいます。そのため、体罰は身体的暴力であると考えられ、しつけや教育という理由で使用されるべきではありません。子どもになにか問題があると思ったら、子どもに関心を向け、話をし、一緒に解決策を考えましょう。2014年メニーノ・ベルナルド法 13.030[訳注:児童虐待に関するブラジルの法律]。日本では児童虐待の防止等に関する法律によって定められています。
心理的暴力
心理的暴力は、子どもの自尊心、アイデンティティ、発達を脅かし、損なう行動です。拒絶、卑下、差別、軽蔑、過度な要求、屈辱的な罰、他人の心理的要求を満たすために子どもを利用する行為を含みます。
性暴力
性暴力は、心理性的発達がより進んでいる者が、自らが性的満足を得るために子どもに性的行為を行ったり行わせたりすることであり、ゲームとして子どもを騙すこともあります。これは、同性間でも異性間でもあります。性暴力はレイプ、近親相姦、セクハラ、性的搾取、ポルノ、小児性愛、性器・胸・肛門への猥褻行為や実際の性交、親密さの強要、露出、性的ゲーム、同意のない、または強制的な性的行為、「のぞき」(観察することによって性的満足を得る行為)など様々な行為を含みます。性暴力は家庭内で、子どもを被害者として起こることが多くあります。加害者は、母親のパートナー、実の父親、祖父、叔父・伯父、ゴッドファーザー[訳注:カトリックの洗礼時の名付け親]、また母親、祖母、叔母・伯母、その他の子ども、依存、愛情、信頼関係のある近親者である可能性があります。
「Dos Crimes Contra A Dignidade Sexual(性的尊厳に対する犯罪)」に関する法律(12.015/2009)[訳注: 2009年に制定されたブラジルの法律]では、法定強姦は、被害者の性別に関わらず、14歳未満の子どもや青少年とのすべての形の性交(実際の性交またはその他猥褻行為)であると定義されています。またこのような行為を14歳未満の子どもの前で行うことも犯罪となります。[訳注:上述のブラジルの法律に基づく記述]
日本では、同意のない性行為は性犯罪とみなされ、16歳未満の人は、性的行為への同意を示すことができないとされています。
ネグレクト
ネグレクトの特徴は、大人(保護者や、子どもの養育に責任を持つ個人および組織)が、子どもの身体的、精神的、社会的発達に必要な最小限の養育を行わないことです。ネグレクトは、薬、医療、教育、適切な衛生環境や刺激、保護、室温調整、学校教育の機会を子どもに与えないことや、子どもの身体的、道徳的、精神的な発育に必要な配慮の欠如を含みます。ネグレクトの最も深刻なものが育児放棄です。
ネグレクトを受けている子どもへの支援方法は?
- 最寄りの医療機関に連絡し、支援または必要な機関への紹介を受ける。
- 即座に児童相談所または最寄りの警察に連絡する。
- 80番(匿名電話)に通報する。[訳注:ブラジルの場合。日本の場合は189番(「いちはやく」)で児童相談所虐待対応ダイアルに匿名通報・相談が可能。]
“Cases of suspected or confirmed child or adolescent maltreatment will be mandatorily communicated to the Guardianship Council of the respective location, without prejudice to other legal measures.“ Art. 13 – Child and Adolescent Statute (ECA).
「子どもや青少年の虐待が疑われるまたは確認された場合、必要な法的処置とともに、各地域の保護者協議会[訳注: ブラジルの『Conselho Tutela』。日本の児童相談所にあたる]への連絡が必須である。」青少年児童法(ECA)第13条[訳注:ブラジルの法律]
支援を妨げる可能性があることは?
- 子どもが言っていることを疑うこと。暴力や虐待を訴える子どもを信じなかったり、批判したりすると支援を求めなくなる。虐待やネグレクトがあるかどうかを判断するのは教師の役割ではない。青少年児童法(ECA)第13条[訳注:ブラジルの法律]にあるように、状況が的確に評価・調査されるように適切な組織と連携することであるが大切である。
- 暴力を矮小化すること。子どもに対する暴力は、決して許されるものではなく、何があっても正当化されるべきではない。大人として、子どもをすべての暴力から守る責任がある。子どもの権利へのすべての侵害に対して、常に警戒を怠ってはいけない。